春になると畑には野菜の芽だけでなく、雑草もたくさん生えます。そこで種まきの前に除草剤をまきます。といってもどんな雑草が生えてくるかわからないですよね。いろいろな雑草に効くように、何種類かの除草剤をまとめてまきます。ただし長期間まいていると野菜自体が弱ってしまうので、短期集中で、そのかわり量を多くまきます。
乳がんの術後、予防のために抗がん剤を使うときも、どの抗がん剤が効くのかわかりませんから、「多剤併用(いくつかの薬を併用する)、短期集中、大量投与」します。髪の毛はばっさり抜けますが治療は半年で終了します。
しかし今回は遠隔転移です。遠隔転移というのはがんが血液やリンパを通って全身に広がったことをいいます。がんは血液中に存在しますので、X線に写った部分だけを取ってもなくなりません。いったんがんがなくなったように見えても、それは根治とは呼ばず、「寬解」といいます。必ず身体のどこかにひそんでいるからです。つまり「遺隔転移は根治できない」ので、おとなしくさせて共生することがコツなのです。
今まで主治医に励まされて根治をめざしてきたのに、今度は根治はできないといわれても受け入れがたい話かもしれません。しかし考えてみてください。糖尿病や高血圧、腎不全、リウマチなど根治できず、一生つき合っていかなければならない病気はたくさんあります。遠隔転移もそうした慢性病のひとつなのです。
治療の目的は根治ではなくなり、緩和、つまり症状を和らげ、がんをおとなしくさせることですので、今回の原則は「単剤使用、長期(生涯)、少量投与」です。
具体的にはホルモン受容体陽性ならホルモン療法、HER2陽性ならハーセプチンだけの点滴を3週に1回です。
このわずか30年の間に、日本のがん死亡率は倍増しました。戦前に猛威を振るった「結核」の死亡率を軽々と超えたのです。
驚くべきことに私が生まれた60年前には、胃がんと子宮頸がん以外のがんはほとんど存在しませんでした。生活環境の変化によってさまざまながんが急増したのです。
そこで、増えているがんや減っているがんを原因別に分類してみました。
これまでは「早期発見・早期治療」ががん死亡率を減らす、と信じられてきました。
しかし肺がんを例に取ってみれば、どんなに肺がん検診率を上げても、どんなに新しい抗がん剤を開発しても、禁煙をしないかぎり肺がん死亡率は下がらなかったのです。
同じように、どんなに乳がん検診率を上げても、どんなに新しい抗がん剤を開発しても、食生活の改善をしないかぎり乳がん死亡率は下がらないのです。
私はけっしてがん治療を否定したり代替療法を推奨したりしているのではありません。いかなるすぐれた乳がん治療であろうと、食生活の改善なしに死亡率を減少させることはできないことを訴えているのです。
欧米の乳がん死亡率は日本の5倍、そして日本人も欧米に住むと死亡率が5倍になります。ということは食生活の改善で死亡率を減らせるということです。
ではどのように食生活を見直せばいいのでしょうか。それはこの世からメタボをなくせばいいのです。
「メタボの三高」はご存じですよね、高収入、高学歴、高身長⋯⋯ではないですよ。高血圧、高血糖、高脂血症(脂質異常症)、それと同時にウエストが太ければメタボリックシンドロームと診断されます。しかし、あわてて病院に行く必要はありません。
高血圧と診断されると病院で降圧剤を処方されます。しかし高血圧は動脈硬化によって流れが悪くなった血液を、血圧を上げることによって流してくれているのです。動脈硬化の原因を改善せずに降圧剤で血圧を下げたら、脳や腎臓に血液が送られなくなります。
高血糖といわれると糖尿病の教育入院を勧められます。インスリン注射によって低血糖をきたさないために、摂取カロリーの6割を糖質で摂るように指導されます。しかしそもそも糖質を摂らなければインスリンを打つ必要もないのです。
血中のコレステロール値が高いと高脂血症と診断されます。しかしコレステロールは細胞表面の細胞膜をつくっている大切な栄養素。生活習慣で傷ついた細胞を修復するために肝臓から送られてくるのです。生活習慣を改めずにコレステロール降下剤を用いたら、細胞が修復されなくなります。
大切なのは薬で検査数値を正常化することではなく、その原因となる生活習慣を改めることなのです。そこで、メタボリックシンドロームという言葉の裏にひそむ「メッセージ性」を読み取ってみましょう。
こう考えてみると、解決方法が見えてきます。
まず人はなぜ太るのでしょう。
人類30万年の歴史は飢餓との闘いでした。いつ食い物にありつけるかわからないので、食べたものを脂肪として蓄える能力をもつ者だけが、今日まで生き延びることができたのです。これを「飢餓遺伝子」または「倹約遺伝子」といいます。
そんな太りやすい体質に対するこれまでのダイエット法が間違っていたのです。
糖質とタンパク質は1グラムでたったの4キロカロリーなのに対して、脂肪は倍以上の9キロカロリーといいますので、油ものを避けている人が多いでしょう。しかし最新の栄養学は次のように改められました。
つまり、摂取カロリーが多くても糖質を摂らなければ太らないのです。
激しい筋トレをすると短時間に大量のカロリーを消費します。しかし無酸素運動で消費されるのは筋肉中のグリコーゲンという糖質で、脂肪は燃焼しません。それに対して散歩の消費カロリーは少ないのですが有酸素運動で脂肪を燃焼するのでやせるのです。
レタスには脂肪やタンパク質はほとんど含まれず、炭水化物が主体です。しかしレタスをいくら食べても太りません。炭水化物には「糖」と「食物繊維」があり、糖は消化吸収されて太りますが、レタスの主成分の食物繊維は消化吸収されないので太りません。
アルコールは1gが7kcal、ガソリンは10kcalですが、どちらもエネルギーとして利用できません。アルコールはカロリーがいくら高くても太りません。
カロリー計算は食物を断熱材の箱の中で燃やして生じた熱量を計算するのですが、体内で同じ熱量が発生するわけではないので、根本的に間違っています。
これまでさまざまなダイエット法が提唱されてきました。
糖質は肥満と糖尿病の原因となりますが、問題はそれだけではありません。
鍋で肉を焦がしても、キッチンペーパーで拭けばコゲは落ちます。しかし、ごはんやジャガイモを焦がすと、いくら洗ってもコゲはとれません。同じように精製した糖質を摂ると血管の内側のタンパク質と結びついて、終末糖化産物(AGE)という頑固なコゲを作ってしまいます。つまり糖は「動脈硬化」を起こし、心臓病や脳卒中の原因になるのです。これを糖毒性といいます。
またがんドックではPET検査が行われます。糖を点滴してからレントゲンを撮ると、がんの部分だけが真っ赤に染まるのです。正常な細胞は脂肪やタンパク質もエネルギー源にしていますが、がん細胞が糖質だけを使う性質(ワールブルグ効果)を利用したものです。つまりがんは精製した糖質を摂ると成長しますし、低糖質の食事をすると成長できなくなります。
私は精製した糖質を「白物5品目」と呼んでいます。白米、パン、麺、小麦粉と砂糖で作った菓子、ジャガイモ。がん患者の方はこれらを摂らないでください。
そういうことを申し上げると、お米や果物を摂ってはいけないのか、という人がいますが、そんなことはいっていません。食べ方があるというのです。
穀物や、野菜・果物の皮は外界とのバリアですので、次の3つの作用があります。
こうした作用をつかさどっているのがポリフェノールです。
つまり穀物なら全粒で、野菜や果物は皮ごと摂れば、抗酸化作用によって若返り効果や抗がん作用が生まれます。また創傷治癒作用によって、傷ついた肌や消化管が若々しくよみがえり、がんを防いでくれます。さらに抗菌作用は感染症が原因のがんを予防してくれます。
昔から「1個のリンゴは医者いらず」というのは、皮ごと食べた場合のことで、皮をむいたリンゴは果糖という糖のかたまりですから、肥満と糖尿病と動脈硬化による脳梗塞・心筋梗塞、さらにがんのもとなのです。
リンゴが皮ごとなら、ナシもカキも皮ごと。
スモモが皮ごとなら、モモもキウイも皮ごと。
キンカンが皮ごとなら、ミカンも皮ごと食べてください。ミカンの皮は「陳皮」といって、漢方薬の6~7割に含まれていますし、七味唐辛子にも入っています。
バナナやパイナップルやメロンのように皮が食べられない果物は食べないでください。
「皮ごと食べても農薬は大丈夫なのか」と心配する人もいますが、あなたはイチゴやサクランボを食べるときは、ごしごし洗わないでしょう。流水で洗う程度で十分なのです。
穀物は色の濃い雑穀米を摂るようにしましょう。
ただし担がん患者、つまりがんの術前の方、がんの薬を処方されている方、がんが再発している方は穀物や果物は控えてください。
ゴボウを水にさらすと真っ黒な色が出ますね。あれをアクだと思って洗い流しているのではないでしょうか。しかし、あればアクではなく「サポニン」というポリフェノールなのです。
「朝鮮人参」という高価な食材があります。滋養強壮効果があり漢方の万能薬として、西洋医学が入ってくるまで非常に珍重されました。「病気のおとっつぁんに朝鮮人参を飲ませるため娘が身売りをした」という説話が残るくらい、その効用もお値段も「お高い」ものでした。ゴボウの「サポニン」はその朝鮮人参の主成分とほぼ同じなのです。
サポニンの「サポ」の語源は「シャボン」です。すなわち石けんと同じ界面活性作用がありコレステロールを分解します。根菜類の皮は土の中の細菌やカビから身を守らなければなりません。細胞膜はコレステロールという油でできていると書きました。つまりサポニンは細菌やカビの細胞膜を破壊して、防菌・防虫効果を発揮するのです。同時に腸内や血中のコレステロールも吸着して体外に排出するので、ダイエットになるのです。
またゴボウは三年草です。冬の乾燥した大地の中で春の発芽に向けて水を蓄えなければなりません。そのため「イヌリン」というムコ多糖類の吸水性ポリマーをもっています。おむつや生理用ナプキンの中に入っている白い粉ですね。血中のイヌリンは体内の余分な水分を吸着しますので、利尿作用がありむくみを取ってくれます。
また食物繊維は腸内細菌の棲み家となり、餌にもなるのです、腸内環境を整え便秘を解消してくれます。
しかし毎日、きんぴらゴボウを食べるのは大変ですね。そこで私はゴボウ茶をお勧めしています。作り方は次のとおりです。
食事は身体の維持に必要な栄養を取り込む作業です。
どんなに栄養を摂っていても、必須栄養が1つ欠ければ体調を崩すのです。そのためバランスよく摂ることが大切です。これを「バランス栄養」とか「完全栄養」といいます。
完全栄養を摂る方法として、いくつかの方法が提案されています。
そこでわかりやすい方法を教えましょう。地球上の生物が生きていくうえで必要な栄養素は共通です。そこで生きているものをまるごと全部いただけばこれが完全栄養。構成している栄養素をすべて含んでいます。
でもウシをまるごと食べられませんよね。魚でもマグロのような大きな魚はやっぱり全部食べられない。一部分だけを食べるのは「部分栄養」といって偏った栄養です。
その点、小魚なら全部食べられます。魚を選ぶときには、なるべくイワシやシシャモのように頭から尻尾まで食べられるものにします。イカや小エビもまるごと食べられますよね。
私は冷凍庫に「シラス」と「サクラエビ」を常備して、サラダのトッピングにしたり、雑穀米に混ぜたりします。
玄米は地面にまけば芽が出ますので完全栄養ですが、白米は芽が出ませんので部分栄養です。ゴマやエゴマの実、チアシードは芽が出ますので完全栄養です。
ふろふき大根は、皮はきんぴらに、葉は味噌汁の具にして全部食べれば完全栄養です。
油は使い方によって、毒にも薬にもなります。ここで油の使い方について簡単に説明しましょう。
「石」と「砂」は同じ成分ですが、石は結合がしっかりと「飽和」しているので固体です。それに対して砂は結合が「不飽和」なので流動体です。
同じように、「脂」と「油」は同じあぶらですが、「脂」は結合が飽和しているので室温では固体です。これを「飽和脂肪酸」といいます。それに対して「油」は結合が不飽和なので室温では液体です。これを「不飽和脂肪酸」といいます。結合が不飽和だと熱によって酸化しやすいのです。
牛や豚のような恒温動物は常に体温が高いために、酸化されにくい飽和脂肪酸です。そのためバターやラードは熱を加えても酸化しにくく、室温では固体です。
それに対して魚は変温動物で水温が低いと体温も低くなるため、最も固まりにくいオメガ3の不飽和脂肪酸です。
植物油についていえば、熱帯地方のココナッツオイルは高い気温によって酸化されない飽和脂肪酸ですので、室温では固体です。
次に温暖な地中海地方のオリーブオイルは不飽和脂肪酸の中でも飽和脂肪酸に近いオメガ9ですので比較的熱に強いのです。
それより北の温帯地方のサラダ油はオメガ6。寒帯地方のエゴマ油や亜麻仁油は最も不飽和度の高いオメ3です。これらの油は凍りにくいのですが、熱に弱く酸化しやすいので冷所保存です。
さあ、脂と油の使い分けがわかりましたね。
熱い料理には、暑い地方の植物または体温の高い動物の脂、すなわちココナッツオイルかラードかバターを使います。
冷たい料理には、寒い地方の植物油、すなわちエゴマ油や亜麻仁油を使います。
皆さんは今まで冷たいサラダに、暖かい地方のオリーブオイルを使ったり、揚げ物や炒め物に寒い地方のサラダ油を使っていたりしたのではないですか。