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乳がんに関する検診から治療、
乳房再建まで乳腺外科
ナグモクリニック総院長 南雲医師が、
詳しく解説。

総院長 南雲 吉則

医学博士
日本乳癌学会認定
乳腺専門医
ナグモクリニック
総院長 南雲 吉則
(なぐも よしのり)

昭和56年3月 東京慈恵会医科大学卒業。
東京女子医科大学形成外科研修、
癌研究会付属病院外科勤務、
東京慈恵会医科大学第一外科 乳腺外来医長を歴任。
平成2年医療法人社団ナグモ会 ナグモクリニック開設。
現在/同会理事長・ナグモクリニック総院長。
東京慈恵会医科大学外科学講座非常勤講師、
近畿大学医学部形成外科非常勤講師、
韓国東亜医科大学客員教授、中国大連医科大学客員教授。
乳がん関連著書多数。

ナグモクリニック 総院長の南雲医師は、健康・乳がん関連などのセミナー、講演に積極的に出演、参加しています。

南雲医師 関連/講演会・出版書籍 情報 他

はじめに

「メッセージ:乳がんと診断された方へ」

乳がんと診断されて、さぞ驚かれたことでしょう。
あたまが真っ白になって主治医がなにを話しているのかほとんどわからなくて、ただ手術の予約だけをして帰り道どこをどう歩いたのかもよくおぼえていなくて、自宅でふとわれにかえったとき不安と孤独感でとめどなく涙がこぼれたのではないでしょうか。

いままで病気らしい病気をしたこともないのに、親戚にも乳がんはいないのに自分の生活のどこがいけなかったのか。
よりによってなぜ自分が乳がんになったのか。つぎからつぎへと疑問が渦巻いては、それにたいする答えが見つからずにいらだっているのではないでしょうか。

がんはあなたを不幸の淵に落とし入れて、あなたはひとりその淵の中でもがいています。
これから進むべき道は手術であり抗がん剤であろうことは、ぼんやりとわかってはいるものの一寸先は真っ暗闇。
闇の世界にどんな得体の知れない敵が潜んでいるのやら、想像するだけでもおそろしく二の足を踏んでいるのではないでしょうか

でも耳を澄ましてください。
ほらききおぼえのあるひとの声が聞こえます。
あなたにやさしく話しかけています。
「いつもそばにいるよ。そして力になるよ」
勇気を持って目を開いてください。
家族がいます、パートナーがいます。友人がいます。主治医もいます。看護師もいます。患者会の人たちがいますみんながあなたに微笑みながら語りかけています
「いつもそばにいるよ。そして力になるよ」

ひとりでなれない夜道を歩くのはこわいです。でもだれかといっしょならこわくない。
それが信頼できるひとなら。その道のことをよくわかっているひとなら。
あなたの手をとってくれます。あなたのこれから進む道のともしびとなってくれます。
あなたにはもうゴールが見えるはずです。
そしてつぶやきます「乳がんなんてこわくない」

もしこのホームページを読んでもわからないことがあれば、私に連絡をしてください。
医師としてあなたの友人としておこたえします「いつもあなたのそばにいるよ そして力になるよ」

乳がん・乳房再建コラム

がんの三大原因

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

毎年、火災によって多くの人が住む家を失い、尊い命を失っています。火災報知機が どんなに「早期発見」をしても、最新の消火システムで「早期消火」をしても、火災の件数も失われる人命の数も減らないのです。それを減らすためには、火の不始末を滅らして「火災予防」に努めることが大切なのです。

同じことが、がんの医療においてもいえます。
どんなにがんを「早期発見」「早期治療」しても、がんになる方の数やがんで亡くなる方の数を減らすことはできないのです。それを減らすためには、がんの原因を減らして「発がん予防」に努めることが大切なのです。
そこで、がんの三大原因についてお話ししましょう。

第一はタバコです。咽頭・喉頭がん(のどのがん)の90% 、肺がんの75% 、食道がんの50% 、胃がんの25% はタバコをやめればなくなります。煙を吸ってのどや肺のがんになるのはわかりますが、煙を飲み込んでいるわけではないのにどうして食道や胃のがんになるのでしょう。それはタバコを吸いながら酒を飲んだりつまみを食べたりするからです。タバコの有毒物質が胃腸まで流れ込んで、がんを起こすのです。

第二は感染症です。子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)、肝臓がんはB型・C型肝炎ウイルス、胃がんはピロリ菌といった感染症によって生じます。感染による炎症は周囲の細胞分裂を盛んにして、がんを誘発します。

第三は欧米化した食生活です。精製した糖質や悪い油は体を傷つけます。傷ついた体を修復するために、細胞の構成成分であるコレステロールがつくられます。コレステロールは性ホルモンにも変化しますので、性ホルモンで成長する女性の乳がん・子宮体がん・卵巣がん、男性の前立腺がんを増加させます。

また脂肪の蓄積による脂肪肝は肝臓がんを、脂肪を消化するための胆汁酸の増加は大腸がんを増加させます。
つまり生活習慣を改善しないかぎりがんはなくなりませんし、いくら治療しても再発するのです。
そこで、こうした原因によってなぜがんになるのか一緒に考えてみましょう。

細胞

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

私たちの身体はさまざまな「臓器」からできています。心臓、肝臓、腎職⋯⋯。臟器は「組織」からできています。そして組織は「細胞」からできています。
細胞は、私たちの身体を構成する最小単位で、しかも最大限の大きさです。

何をいっているのかと思うでしょうが、細胞は小さすぎても大きすぎても都合が悪いのです。

車やコンピュータを作るときに部品の数が多すぎたら調達も大変ですし、組み立ても大変です。同じ機能なら、最も少ない数の部品ででき上がったほうが効率的です。
われわれの身体が単細胞(1つの細胞)でできていたら複製(コピー)も簡単ですね。
1回の細胞分裂で2人の人間ができるのですから。しかしそんな大きな細胞は成り立ちません。栄養が行き渡らないからです。

細胞の中は「細胞質」というゼリーでできています。細胞質には心臓も血管もありませんので、すみずみまで栄養を行き渡らせるには、ゼリーの中をしみ渡っていかなければなりません。
栄養が確実にすみずみまでしみ渡る最大の大きさが10ミクロン(0.01mm)。これより大きいと栄養が行き渡りませんし、これより小さいと身体をつくるのにたくさんの細胞を用意しなければなりません。
ですから細胞の大きさは、どの臓器でも10ミクロンです。肝臓は大きいから小さい膵臓より細胞が大きい、なんてことはないのです。
それどころか、動物の種によって細胞の大きさが異なることもありません。 地球上の生物はすべて共通の祖先から進化したのですから、細胞の大きさも共通です。ネズミの細胞は小さく、ゾウの細胞は大きい、なんてことはないのです。

10ミクロンがいちばん理想的なのですから、すべての臓器もすべての動物も同じ10ミクロンの大きさの細胞によってできています。身体の大きさが異なるのは細胞の数が異なるからです。

がん細胞も10ミクロンです。これより大きいと栄養が行き渡らずに、がん細胞は死滅してしまうからです。

「10ミクロン」が1人の身体になるには

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

さて、この10ミクロンの細胞がいったい何個集まったら、身体ができ上がるのでしょうか。人体は50兆個の細胞からできている、といわれています。

1個の受精卵が十月十日の間に1人の人間をつくるのですが、細胞を1個、2個、3個と1つずつコピーしていたらとても間に合いません。もっと効率のいい方法はないのでしょうか。それが「がまの油売り」です。

「抜けば玉散る氷の刃」の口上とともに、日本刀で懐紙を2つに裂いていきます。「1枚が2枚、2枚が4枚、4枚が8枚、8枚が16枚、16枚が32枚……」

受精卵も細胞分裂といって、1個の細胞が2個、2個が4個、4個が8個と倍々に増えていきます。倍々に分裂を繰り返したって細胞の数はたかが知れているとお思いでしょうが、10回分裂するとなんと約1000個、10の3乗になるのです。

では20回なら……、そうです、10の6乗。30回なら10の9乗。40回なら10の12乗で、なんと1兆個です。がまの油売りが懐紙をたった40回裂くだけで、1兆枚の紙吹雪ができるようなもの。同じように、1個の受精卵が40回の分裂で1兆個になるのですから、すごい勢いですね。

さて細胞がたくさん集まったものが「組織」です。組織がサイコロのような立方体だと仮定しましょう。立方体の体積は縦×横×高さ、つまり1辺の長さの3乗です。細胞は10回分裂すると数や体積や重さは10の3乗になりますが、このとき組織の大きさ(1辺の長さ)は10倍になるということです。

10ミクロン、0.01mmの大きさの細胞が10回分裂すると、組織の大きさはその10倍の0.1mm。20回で1mm、30回で1cmです。

メートル法では1cm3(1cc)の水の重さを1gと決めたのですから、30回分裂したときの組織の重さは1gです。

重さは10回分裂するごとに1000倍になりますので、40回分裂すると1gの1000倍で1kgになります。細胞の数はさっきお話しした1兆個です。

大人の平均体重は50kgですから、1兆個の50倍の50兆個、という具合に計算したのでしょう。自分で1つずつ数えた人はいないはずです。

細胞には命の導火線がある

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

『古事記』によれば、人類の始まりはイザナギという夫とイザナミという妻の2人の神様。イザナギは死んだイザナミを追いかけて、黄泉の国まで行きますが、イザナミとの約束を破ってしまう。怒ったイザナミが「1日1000人の人間を殺す」というと、イザナギは「それなら1日に1500入の人間を誕生させる」と答えたそうです。それ以来、ヒトは死ぬようになりましたが、それ以上のヒトが生まれるようになりました。

赤ちゃんがおなかの中にいる間、細胞が死ぬことはありません。十月十日の間、休むことなく細胞分裂を繰り返し、41~42回の分裂で3兆個、約3kgの赤ちゃんを誕生させます。

しかし、生まれたあとも細胞が倍々に増え続けたら、50回分裂で1トン、60回で1メガトンです。身体が東京タワーのように巨大化してしまいます。そこで生まれたあとの細胞には、一定回数分裂すると細胞が死ぬように命の導火線がついています。それが「テロメア」です。数年前のノーベル賞でしたね。

テロとは「はじっこ」、メアとは「部分」、つまり「はじっこの部分」という意味です。
どこのはじっこかというと、細胞の核の中に染色体がある。染色体は遺伝子DNA二重らせんのより糸です。より糸にはほつれ防止のために結び目がついています。なんとDNAのはじっこにも結び目がついている。この結び目がテロメアです。

細胞は生涯、細胞分裂を続けます。このとき遺伝子DNAを正確にコピーするのが複製酵素「ポリメラーゼ」です。赤ちゃんがおなかの中にいるときはテロメアも複製酵素「テロメラーゼ」によってコピーされます。ところが、出生と同時にテロメラーゼが失活、すなわち働かなくなってしまうのです。そのため細胞分裂のたびにテロメアが導火線のように短くなって、テロメアが燃え尽きると細胞も死滅するのです。

生まれたばかりのときは死ぬ細胞より生まれる細胞の数が多いので、身体は大きく成長していきます。

思春期になるとテロメアが短くなってきて、死ぬ細胞と生まれる細胞の数が同じになるので成長が止まります。
テロメアがさらに短くなると身体は老化を始め、ついにテロメアがなくなると細胞が分裂しなくなってヒトも死ぬのです。

テロメアの限界

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

「どうして、そんな時限爆弾のようなものが組み込まれているんだろう。テロメアが短くならなければ、永遠に生きられるのに」と思う方もいるでしょう。

しかし考えてもみてください。人類だけが永久に死ななければ地球上の人口は増え続けて大変なことになってしまいます。私たちの役目は「生き続けること」ではありません。「後世を育てること」なのです。人間以外の生物の一生を観察すると、そのことが よくわかります。

私が子どものころは母親の実家の津軽で夏休みを過ごしました。彼方に望む岩木山から岩木川が滔々と流れきて、その両岸の肥沃な大地にリンゴ畑が広がっていました。 幼きころの私はそこでセミやカブトムシ、コオロギをとって虫かごに入れました。

カブトムシやコオロギはスイカの皮を入れておけば長い間生きるのに、セミだけはどんなことをしても7日間で死んでしまいます。なぜなのか大人に聞いても昆虫図鑑を読んでも理解できず、ずいぶん悲しい思いをしました。

セミの幼虫は土の中で7年間も生きています。やがて地上へ出て成虫となり、激しく鳴いてパートナーを探します。そして生殖が終わったら、ポトリと落ちて死ぬのです。

病気になったわけでも、栄養が足りないわけでも、外敵に襲われたわけでもありません。地球上のあらゆる生物は、生殖のためにこの世に生まれ、生殖年齢が終了すると死を迎えます。

魚でも昆虫でも鳥でも、人類と遺伝子がほとんど変わらないチンパンジーでさえも、生殖が終了すると死ぬように、テロメアの長さが設定されているのです。

なぜ人間だけが生殖年齢の終了後も生き続けられるようになったのでしょう。その答えは、人類の繁殖能力の「低さ」にあります。

あらゆる動物は1回の性交でほぼ確実に妊娠しますが、人間とパンダは性交してもなかなか妊娠しません。しかも、生まれたら生まれたで、ひとり立ちに時間がかかります。

しかしそれでは、母親は次の生殖に精を出すことができません。

そこで生殖が終了した女性に子どもを預けることにしたのです。閉経後も子育てにかかわれるようテロメアが延びたのです。

がんの誕生秘話

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

ミミズは1本の管のような生き物です。私たちの身体も同様に管からできています。「消化管」「気管」「血管」です。こうした管の内側は粘膜でできていて、常に外界からの刺激にさらされています。

暴飲暴食をすれば消化管の、タバコを吸えば気管の粘膜が傷つきます。すると周囲の細胞が細胞分裂して数を増やし傷口を修復します。そのたびにDNAのテロメアは短くなります。もちろんそこで生活習慣を改めればいいのですが、人間は愚かなものです。 元気になるとまた不摂生をする。

「ちょいと一杯のつもりで飲んで、いつの間にやらハシゴ酒。気がつきゃホームのベンチでゴロ寝、これじゃ身体にいいわきゃないよ。わかっちゃいるけどやめられねえ」

わかっているならやめればいいのですが、そのまま不摂生を続けると、ついにはテロメアの限界に達して細胞分裂が停止し、傷口がふさげなくなります。

人間の身体はよくしたもので、細胞分裂が限界に達したとき、おなかの中の赤ちゃんと同様にテロメアの複製酵素テロメラーゼをもった修復細胞が生まれ、永遠に細胞分裂を続けます。それをがんといいます。

つまり「がんとは不摂生によって炎症が生じた粘膜に発生する修復細胞」といえます。

ではなぜ修復細胞であるはずのがんが命をおびやかすのでしょう。

私たちの身体には毎日5000個のがん細胞が生じています。それを知ってか知らずか、不摂生をすればがん細胞も分裂増殖を続け、そのうちに居場所が狭くなります。家が狭くなったらあなたも建て増しか引っ越しをするでしょう。がんが隣の臓器に建て増しするのが「浸潤」です。または離れた臓器に引っ越しするののが「転移」です。

つまりがんは、どこからか突然やってきた殺し屋ではなく、あなたの生活習慣が生んだあなたの子どもなのです。がんを憎んではいけません。むしろまずお礼をいってください。

「私の身体を治そうとして頑張ってくれているんだね。ありがとう、でも頑張りすぎなくていいよ。これからは生活習慣を改めるから」と声をかけて、仲よくつき合ってほしいと思います。今からでも生活習慣を改善すれば、がんの勢いは弱まります。


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