乳がんの病期について南雲吉則医師が詳しく解説|ナグモクリニック 東京・名古屋・大阪・福岡

乳がん・乳房再建 ~検診・治療・手術~

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乳がんの病期

病期判定はあくまで目安!

乳がんと確定診断されたら、主治医はまず乳がんの大きさ、脇の下のリンパ節への転移の有無、遠隔転移の有無を調べます。この3つの要素によって分類されるのが「病期」です。病期はあなたの乳がんの進行度を示し、最適な治療法を提示してくれます。しかし、この章で知ってほしいのは、病期はあくまで術前診断で、目安にすぎないということです。手術によって取られたしこりやリンパ節を病理医が顕微鏡で見て調べる「術後の病理診断」が乳がんの進行度の確定診断なのです。

1.乳がんと確定診断されたら主治医は次にどんな検査をしますか?

主治医はまず病期(ステージ)の決定 に必要な検査をします。次にあなたが手術や全身麻酔に耐えられるかを調べます。

乳がんの大きさ

触診、超音波検査やマンモグラフィーによって乳がんの大きさ、局所の広がりを正確に調べます。CTスキャンやMRIが用いられることもあります。

腋窩リンパ節転移の有無

脇の下のリンパ節をよく触って調べます。超音波検査、CTスキャン、MRIが有用なこともあります。

遠隔転移の有無

乳がんが遠隔転移しやすいのは首のリンパ節、骨、肺、肝、脳です。首のリンパ節をよく触って調べます。血液中の腫瘍マーカー(がんによって作られる物質)の値を調べます。肺のレントゲン、CTスキャン、骨シンチグラフィー、肝臓の超音波やCTスキャン、脳のMRIやCTスキャンを行うことがあります(その必要性については再発の発見を参照)。最近では手術前の検査としてPETも導入されています。

手術に耐えうるか

採血をして、貧血、肝機能・腎機能の低下、他の人に移す恐れがある感染症がないかを調べます。また全身麻酔で手術するときは、心電図や呼吸機能の検査を行います。

2.病期はどのように分類されますか?

乳がんの大きさ、脇の下のリンパ節の転移の有無、遠隔転移の有無によって病期を次のように分類します。

0期
非浸潤がんです。
がんは乳管の上皮内に留まり、周囲の組織に浸潤しないため、はっきりとしたしこりを形成しません。他の臓器に転移することもないため、命に関わることはありません。がんと呼ぶよりも前がん状態と呼ぶべきでしょう。
Ⅰ期
早期乳がんと呼ばれます。
しこりが小さく(2㎝以下)、脇の下のリンパ節に転移していなそうなことを意味します。
Ⅱ期
これも一応早期乳がんと呼ばれます。
しこりが小さくても脇の下のリンパ節に転移していそうな場合、またはしこりが大きくても(2~5㎝)、脇の下のリンパ節に転移していなそうな場合です。
Ⅲ期
局所進行乳がんです。
しこりが大きく(5㎝以上)、脇の下のリンパ節にも転移していそうな場合、または脇の下のリンパ節にたくさん転移していることが明らかな場合です。
Ⅳ期
遠隔転移乳がんまたは末期がんと呼ばれます。
がんが他の臓器(骨、肺、 肝臓、脳)まで広がっている疑いがあるとき。

表2-1 乳がんの病期 (ステージ)
乳がんの病期(ステージ)(図)

0期:非浸潤がん
ⅢB期:がんが皮膚や胸筋に浸潤、炎症性乳がん、胸骨傍リンパ節に転移
Ⅳ期:遠隔転移

3.術前には早期乳がんと言われ安心していたのに、術後の病理結果で進行がんと言われました。どちらを信じたらよいのでしょうか?

術前の病期判定より、術後の病理診断が正しいのです。がんの治療後の経過(あるいは生存率)のことを「予後」と言います。予後に影響を与える因子のことを「予後因子」と言います。予後因子にはいろいろなものがありますが、その多くは手術をしないと判明しません(乳がんの補助療法を参照)。術前にわかっているのは乳がんの大きさ、脇の下のリンパ節の転移の有無、遠隔転移の有無だけです(これも確定診断ではありません)。たまたまこれら3つの因子は乳がんの予後に最も大きな影響を与えるために、これらを中心に病期を決定することになりましたが、実際はかなりいい加減なものです。

乳がんの大きさ

測る人によって誤差が生じます。しこりの大きさを2㎝とするか2・1㎝とするかで病期が異なります。また術前に大きいと判断したがんを術後病理検査で実際に測ってみたら小さいことや、その逆はよくあります。

腋窩リンパ節転移の有無

術前に手で触れて判断しますが、実際に手術でリンパ節を取ってみないと正確なことはわからないのです。術前の 診察で腋窩リンパ節転移があると言われた患者さんの27%には転移がなく、転移がないと言われた患者さんの39%には転移がありました(信頼度3)。

遠隔転移の有無

遠隔転移は、骨、肺、肝臓、脳の順で生じますので、一般的には骨シンチグラフィー、CTスキャン、MRI、超音波検査により検査します。また、血液中の腫瘍マーカーの上昇が指標となる場合もあります。

4.なぜそんなにいい加減な病期分類を行うのですか?

乳がんと宣告された方の多くが「私のがんは治るのか?」「私はあとどれくらい生きられるのか?」といった予後(つまり自分の未来)を知ろうとします。予後を術前に予測するには予後因子の組合せによる病期分類が便利なのです。しかし、この病期は術前に判定し、術後に変更してはいけないことになっているために、術後の病理結果が反映しない、いい加減なものになってしまうのです。術前の病期分類はあくまで参考程度にとらえ、術後の病理結果による冷静な判断をしましょう(乳がんの補助療法を参照)。

5.術前に腫瘍マーカーを測りました。どういう意味があるのでしょうか?

腫瘍マーカーはがんによって作られる物質 で、がんがあるとマーカーの値は高くなります。2つの種類があります。

がん全般の腫瘍マーカー

CEA など。乳がんだけでなくあらゆるがんや炎症でも陽性となる。

乳がんに特異的な腫瘍マーカー

CA 15-3、BCA225、NCC-ST439。

腫瘍マーカーを測る目的には次のようなものがあります。

  1. 乳がん 早期発見のため
    乳がんは前立腺がんや精巣腫瘍のように早期から腫瘍マーカーが上昇しないため、相当進行するか遠隔転移が起こるまで、ほとんどの場合は陰性です。そのため乳がん 早期発見のための価値はありません。
  2. 遠隔転移の確認のため
    レントゲンや骨のシンチで遠隔転移が疑われても腫瘍マーカーが陰性ならばその可能性は低くなるため、遠隔転移の検査を省略するために術後に行われます。
  3. 治療効果判定のため
    遠隔転移に対する治療効果を判定するために用いられることもあります。原則的には腫瘍の量を反映しますが、わずかな数値の増減に一喜一憂することは意味がなく、あくまで補助的なものとしてとらえるべきです。

6.早期乳がんとは?

早期乳がんという言葉を聞いたときの印象は、「治療が簡単そうで、命に問題ない」ということでしょう。確かにこの早期乳がんの意味は2つあります。

  1. 局所に限局した乳がん
    乳がんが小さく乳腺全体を侵していないこと。
  2. 予後が良い乳がん
    治療によく反応し生存率が高い乳がん。 そのため乳がんではⅠ期(しこりの大きさが2㎝以下でリンパ節転移がない)、または大きさに関係なく非浸潤乳がんのときを指します。どんなに大きくてもリンパ節に転移していないものもあれば、小さくても転移・再発の可能性が高いものもあります。また治療法の進歩によってこれまで進行乳がんだったものが早期と呼ばれるようになるかもしれません。

核腫瘍マーカーのがん別陽性率(図)

表2-2核腫瘍マーカーのがん別陽性率

7.進行乳がんとは?

皆さんが主治医から「進行乳がんです」と言われたときの印象は、「治療が困難で、もう手遅れ」ということではないでしょうか。確かにこれまでは通常の乳がんより早期のものが早期乳がん、手遅れなものが進行乳がんと呼ばれてきました。しかし現在は早期以外の通常の乳がんはすべて進行乳がんと呼ばれます。診断された時点で遠隔転移のある乳がんはⅣ期に属し、根治 が不可能なため末期がんと呼ばれることもあります。しかし、乳がんは遠隔転移をしてからの経過が長いために、終末期を意味する末期という言葉はふさわしくないかもしれません。

乳がん・乳房再建コラム

カタカナばかりのわかりにくい分類

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

「乳がん検診を受けたらしこりがあって、注射器で細胞を取ったところ『ステージ5』といわれました。これは末期なのでしょうか」という質問を受けましたが、ステージとはがんの進行度「病期」のことで、1から4までしかありませんので、たぶん、細胞診の悪性度分類で「クラス5」だったということでしょう。
乳がんの診断ではカタカナの分類を多く使いますので、患者さんは非常に混乱します。
ここで整理しましょう。

ステージ(病期)
手術前にがんの大きさとリンパ節の硬さを手でふれて4段階に分類します。がんが2cm以下でリンパ節も硬くなければステージ1、つまりI期です。がんが2~5cm、またはリンパ節が数個硬ければステージ2、Ⅱ期ですね。がんが5cmを超えたりリンパ節がたくさん硬かったりすればステージ3、III期です。肺や肝臓に転移があればステージ4、またはIV期と呼びます。
クラス
がんに注射針を刺して細胞を取って頸微鏡で調べるのを細胞診といいます。5段階に分類してクラス1、2は良性、クラス3は灰色、クラス4,5は悪性、つまりがんです。
力テゴリー
マンモグラフィ(乳房をはさんで撮るレントゲン)でも5段階に分類します。カテゴリー1が正常、2が良性、3が良性だが要注意、4ががんの疑い、5ががんです。
グレード
取ったがんを顕微鏡で見て顔つきを1から3までに分類します。1は細胞の顔つきも全体の並び方もおとなしい。2は中等度で、3は顔つきも悪くでたらめに並んでいます。

最近はなんでもカタカナでいうようになって、私のような年代には何がなんだかわからない。製薬会社がしきりに「コンプライアンス」というので、何がいいたいのかよく聞いていると、どうも「社内倫理規定」のことで、医者に過大な報酬を与えてはだめ、食事をごちそうしてはだめ、とかいいたいらしい。どうも「経費削減」的な話です。
せめて乳がんの診断ぐらいはカタカナを使わないでほしいものです。

病期(ステージ)

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

乳がんと確定診断されたら、主治医はまず次のことを調べます。

乳がんの大きさ
手でさわって乳がんの大きさを調べます。超音波検査やマンモグラフィによって大きさを測ることもあります。
腋窩リンパ節転移
脇の下のリンパ節をさわって調べます。超音波検査、CTスキャンが有用なこともあります。
遠隔転移
乳がんが遠隔転移しやすいのは「骨・肺・肝臓・脳」の順番です。そこで骨シンチグラフィ、胸部レントゲン、CTスキャン、肝臓の超音波検査、脳のMRIによって検査します。こんなにいくつも検査をするのは大変なので、最近は1回のPET検査ですませてしまうこともあります。また血液中のがん反応である腫瘍マーカーが正常なら、少なくとも目に見えるような遠隔転移はないことになりますので、めんどうな検査を省略できます。

この3つの要素によって分類されるのが「病期」です。しこりのことをtumor、リンパ節のことをlymph node、遺隔転移のことをmetastasisといい、それぞれの頭文字などを取ってTNM分類とも呼びます。

0期
非浸潤がんです。がんは乳管の上皮の中にとどまり、周囲の組織に浸潤しないため、はっきりとしたしこりを形成しません。ほかの臓器に転移することもないため、命にかかわることはありません。がんと呼ぶよりも「前がん状態」と呼ぶべきでしょう。
Ⅰ期
早期乳がんです。しこりが2cm以下で、脇の下のリンパ節に転移していません。
Ⅱ期
やや進行した乳がんです。しこりが小さくても脇の下のリンパ節に転移している場合。またはしこりが大きくても(2~5cm)、脇の下のリンパ節に転移していない場合です。
Ⅲ期
局所進行乳がんです。しこりが大きく(5cm以上)、脇の下のリンパ節にも転移している場合。または脇の下のリンパ節にたくさん転移していることが明らかな場合です。
Ⅳ期
遠隔転移乳がん。がんは骨・肺・肝臓・脳などのほかの臓器まで広がっています。

病期判定はあくまで目安

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

「術前には早期乳がんといわれ安心していたのに、術後の病理結果で進行がんといわれました。どちらを信じたらいいのでしょうか」という質問を受けます。

術前の病期判定より、術後の病理診断が正しいのです。病気の経過のことを「予後」といいます。予後に影響を与える因子のことを「予後因子」といいます。予後因子にはいろいろなものがありますが、その多くは手術をしないと判明しません。

術前にわかっているのは乳がんの大きさ、脇の下のリンパ節の転移の有無、遠隔転移の有無だけです。たまたまこの3つの因子は乳がんの予後に最も大きな影響を与えるために、これらを中心に病期を決定することになりましたが、実際はかなりいいかげんなものです。

たとえば乳がんの大きさは、測る人によって誤差が生じます。しこりの大きさを2cmとするか2.1cmとするかで病期が異なります。また術前に大きいと判断したがんを術後病理検査で実際に測ってみたら小さいことや、その逆はよくあります。

次に腋窩リンパ節転移。術前に手でふれて判断しますが、実際に手術でリンパ節を取ってみないと正確なことはわからないのです。術前の診察で腋窩リンパ節転移があるといわれた患者さんの27%には転移がなく、転移がないといわれた患者さんの39%には転移があったと報告されています。

なぜそんなにいいかげんな病期分類を行うのか。

本当の予後は、手術で取ったしこりやリンパ節を病理医が総合判定する「術後の病理診断」でしか知ることはできませんと話しました。

しかし乳がんと宣告された人の多くが「私のがんは治るのか?」「私はあとどれくらい生きられるのか?」といった予後、つまり自分の未来を知ろうとします。

そこで術前の乏しい情報をもとに病期判定をしているのです。ですから術前の病期で一喜一憂せずに、あくまで参考程度にとらえ、術後の病理結果による総合判定を冷静に待ちましょう。

早期がんと進行がん

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

早期がんという言葉を聞いたときの印象は、「治療が簡単そうで、命に別状はない」ということでしょう。また進行乳がんといわれたときは、「治療が困難で、もう手遅れ」と感じることでしょう。

確かにこれまではがんが小さければ早期がん、大きければ進行がんと呼ばれてきました。

しかし非浸潤がんのように乳管の壁を突き破る力がないために、乳管の中を右往左往して、気づいたときには乳腺全体に広がっているものも早期です。またどんなに大きくてもリンパ節に転移していないような「ゆっくりがん」もあります。

その一方で、小さながんだったのに、手術してみたら脇の下のリンパ節がぐりぐりに腫れていて、手術後抗がん剤にもほとんと反応しない、たちの悪いがんということもあります。

つまり大きさだけで早期かどうかを決めるのは早計です。さらに治療法の進歩によって、これまで進行がんだったものが早期がんと呼ばれるようになるかもしれません。

白血病の腫瘍細胞には「フィラデルフィア染色体」の異常が見つかることがあります。この染色体があるとたちが悪くて致命的である、と学生時代には習いました。ところがイマチニブ(グリペック)という分子標的薬が開発されて、ほとんど治るようになったのです。そのためフィラデルフィア染色体がある白血病はたちがよいとまでいわれるようになりました。

同じように乳がんの中にはHER2というがん遺伝子をもっているタイブがあり、遠隔転移しやすくたちが悪いといわれていました。しかしトラスツズマブ(ハーセプチン)という分子標的薬ができて、65%以上の確率で治るようになりました。今後も新しい薬の開発によって、進行がんも早期がんに変わるでしょう。



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