乳がん再発の発見について南雲吉則医師が詳しく解説|ナグモクリニック 東京・名古屋・大阪・福岡

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再発の発見

遠隔転移を発見するための検診は意味がない!

がんには「浸潤」「転移」「再発」という性質があります。「浸潤」とは、周囲の組織に染み出すように広がることです。「転移」とは、がん細胞が血管やリンパ管を通って離れた臓器にがんをつくることです。「再発」とは、術後しばらくしてから、手術した場所や離れた臓器に再び現れることを言います。近くのリンパ節に転移する「リンパ節転移」に対して、離れた臓器への転移は「遠隔転移」と呼ばれます。手術した場所に再発する「局所再発」に対して、離れた臓器での再発は「遠隔再発」または「転移性再発」と呼ばれます。

1.再発にはどのような種類がありますか?

局所再発

手術で取り残した乳腺組織に、同じタイプの乳がんがあとから出た場合です。前回取った場所に近いことが特徴です。

領域リンパ節再発(領域再発)

手術で取り残した同側の腋窩リンパ節転移があとから見つかり、離れた他の臓器に転移がない場合です。反対側の腋窩や首のリンパ節転移は転移性再発で、領域再発ではありません。遠隔転移や他のリンパ節転移と同時に腋窩再発したときも転移性再発です。

転移性再発

手術した乳房から離れた臓器に再発することです。乳がんの転移性再発の多くは肺、骨、肝臓、脳に生じます。「遠隔再発」とも呼びます。

2.乳がんの手術をした場所にがんが現れても局所再発でないことがありますか?

異時多発

病理検査でタイプが異なるときは、再発ではなく、たまたま違うがんができたと判断します。

皮膚転移

遠隔転移の一症状として皮膚にいくつも再発したときは転移性再発で、局所再発とは呼びません。

3.乳がんの手術後、リンパ節にがんが現れても領域再発でないことがありますか?

反対側の腋窩や首のリンパ節転移

同側の腋窩以外のリンパ節転移は転移性再発(または遠隔転移)で、領域再発ではありません。

遠隔転移と同時に現れたとき

遠隔臓器や他のリンパ節の転移(どちらも遠隔転移)と同時に腋窩再発したときは転移性再発と見なします。

4.再発は手術によって治癒が可能ですか?

再発の種類によります。

局所再発

局所再発は取り残しによるものなので、遠隔転移がなければ、残った乳腺を全摘することによって再度の根治が可能です。

領域再発

乳がんが同側の腋窩リンパ節にとどまっていて、遠隔転移がない領域再発はそのリンパ節を追加切除することによって治癒することがあります。

転移性再発

遠隔転移はそれがたとえ1つでも、乳がんがすでに全身に広がったことを意味します。その部分だけを取っても他の場所に再発するため、延命にはなりません。ホルモン療法か化学療法(抗がん剤)が必要です。

5.術後の通院の目的は何ですか?

局所再発の早期発見

局所再発率は手術法によって異なります。胸筋温存乳房全摘術ならば2%未満、乳房温存術は35%ですが、放射線をかけた乳房温存療法ならば10%、皮下乳腺全摘術・皮膚温存乳房切除術の局所再発率は胸筋温存乳房全摘術とほぼ同じと報告されています。

対側乳房における新たながんの発見

対側乳房の発がん率は通常の約3倍ですが、年0・75%(信頼度3)と決して多くはありませんが、通常の乳がん検診として行います。

遠隔再発の発見

遠隔転移を発見するための検査をしても生存率の向上にならないことが科学的に証明され、その意義は否定されています。遠隔再発率は乳がんの予後因子によって異なります(乳がんの補助療法参照)。

6.どんなとき局所再発に注意をしなければなりませんか?

乳房温存療法後の局所再発は触診やマンモグラフィー、超音波検査で発見しやすく、乳房全摘術で治癒できる可能性があります。そのため主治医による定期的な触診と乳房自己検診をお勧めします。局所再発の可能性が高いのは次の場合です。

35歳未満

局所再発、遠隔再発、対側乳がんの危険性が高い(信頼度3)。

断端陽性

切り口または切り口近くにがんがあったとき。

乳房温存術

乳房全摘術よりも局所再発率が高い(皮下乳腺全摘術・皮膚温存乳腺切除術の局所再発率は全摘術と同等と報告されています)。非浸潤がん 広範な非浸潤がん、浸潤がんの周囲に非浸潤がんがあったとき(信頼度3)。

7.通院のたびの採血や半年ごとの全身のレントゲン検査は必要なのでしょうか?

遠隔転移は根治不可能なため、どんなに早く発見しても早期診断にはなりません。そのため検診よりも補助療法による予防が大切なのです。遠隔転移を発見するための検査について次のような報告があります。

  • 遠隔転移発見の検査によって治癒率が影響されることはない(信頼度3)。
  • 遠隔転移発見の検査は生存率およびQOL(人生の質)の向上に影響しない(信頼度1)。
  • 骨シンチ、肝臓の超音波検査・CT、肺のX線・CT、脳のCT
  • MRI、腫瘍マーカーからなる遠隔転移発見の検査は避けるべきである(乳がん国際ガイドラインの勧告)。主治医が遠隔転移に対する検査を頻回に行う場合は、次の質問をしてください。
  • この検査の目的は遠隔転移の発見ですか?
  • 遠隔転移は早期発見しても根治が不可能だというのは本当ですか?
  • ということは遠隔転移の検査をしてもしなくても生存率は変わらないのですね?
  • それなら遠隔転移の検査を受けなくてもいいですか?

8.術後どんな変化があれば主治医に報告すべきですか?

局所再発は根治可能です。遠隔再発は根治不可能ですが、症状があるときは治療で改善できるので、我慢せずに主治医に報告しましょう。

手術部位や首にしこりを発見した場合

局所再発を疑います。

しぶとい痛みが続く場合

局所再発や骨転移を疑います。

咳や息苦しさが続く場合

肺転移やがんによる気道の圧迫を疑います。

めまい、目のぼやけ、頻回で重い頭痛、歩行障害などが続く場合

脳転移を疑います。

食欲不振や原因不明の体重減少がある場合

がんによる通過障害や栄養障害を疑います。こうした症状のほとんどは乳がんの再発とは関係ありません。しかし、日常生活が急に困難になるような場合や、あらゆる治療が効かない頑固な症状が3週間以上続く場合は主治医に報告し、正しい診断を得る必要があります。

ワンポイントアドバイス

術後の痛み

乳がんの無料相談をやっていると次のような質問をよく受けます。「全摘をした胸の脇のあたりが術後半年してからピリピリ、チクチクする。主治医に聞いても、そのうち治るとしか言ってくれません。もしかして再発ですか?手術の失敗ですか?」術直後になかった痛みが現れたときに、主治医がきちんと説明をしてくれないと、不安が募ります。不安は痛みを倍増させます。じつはこの痛みは「回復徴候」といって、喜ぶべき徴候です。乳腺を全摘すると神経が傷つくため次のような経過をたどります。

疼痛期

術後3日から1週間は、傷口がズキズキします。痛み止めが必要です。

麻痺期

痛みが失せると、乳房の皮膚や上腕の内側、ときには背中のあたりまで、感覚が麻痺して自分の皮膚ではないように感じます。

回復期

術後しばらくすると、乳腺を切除したところと周囲の脂肪を残したところとの境目から神経が再生してきます。再生した神経は過敏なため、ちょっと触れてもピリピリ、チクチク、またはむず痒い感じがします。ちょうど正座をしていると足の感覚が麻痺しますが、足を伸ばすと今度は感覚が戻るときにビリビリと痺れて不快に感じるのと一緒です。これを「回復徴候」と言います。術後数カ月で現れる人も数年経って痛み出す人もいます。痛み止めの必要はありません。

完治期

神経の麻痺した範囲はだんだん狭くなり、ついに感覚が戻ります。ただし、神経を根元から切っているときは完全には戻りません。針を刺せば痛みは感じますが、冷たさは感じにくいでしょう。



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