乳がんの診断について南雲吉則医師が詳しく解説|ナグモクリニック 東京・名古屋・大阪・福岡

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乳がんの診断

「乳がんです」と言われても、「本当かな?」と思え!

医師から「乳がんです」と言われたら、「もうだめだ」と観念してしまう人が多いようです。そのため「あとはすべてお任せします」の“お任せ医療”になってしまうのです。手で触っただけで「乳がんです」と言われても、「本当かな?」と思う気持ちが大切です。その気持ちがより正確な診断を生み、「がんならばどれだけの広がりをもっているの?」という新たな疑問を生み、「それならばこういう治療が可能なのでは?」という要望も生まれるのです。

1.乳がんの検査はどのように進められますか?

①問診

まず以下の質問を受けます(受診の前にまとめておきましょう)。

  • 症状がいつどのように現れ、どのように変化してきたか?
  • 他にどこの病院をいつ受診してどんな検査をしたか、その結果は?
  • これまでにした大きな病気やアレルギーは?
  • 血のつながりのある人に乳がん経験者がいるか?
②視診・触診

両側の乳房と乳頭にくぼみがないか観察します。両側の乳房と、脇の下(腋窩)と首(鎖骨上)の リンパ節をよく触ります。

③マンモグラフィー

乳房を板で挟んで写すレントゲン検査です。

④超音波検査

乳房に超音波を当てて、体内のしこりをモニター画面に映し出す診断法です。超音波で観察しながら針で組織や細胞を採取することもできます。

2.触診とレントゲン検査で「乳がんではない」と言われました。本当でしょうか?

乳がんの診断には直接診断と間接診断があります。

間接診断
問診、触診、レントゲンや超音波の画像診断があります。
直接診断
しこりから細胞または組織を取って、病理医が顕微鏡でがんの有無を診断します。確定診断とも言います。

専門医が行った間接診断で異常がない場合は、それ以上の検査をする必要はありません。
もちろん、どんな医師にも見落としはありますから、間接診断だけで「絶対に」と言いきることはできません。確定診断のためには直接診断が必要です。しかし、直接診断は痛みを伴う検査ですから、そのたびに直接診断をしていたのでは患者さんの負担も大きくなります。

  • もし診断医が乳がんの専門医であれば、数カ月後にもう一度診てもらうだけで十分です。
  • もし診断医が乳がんの専門医でないときには、専門医を受診してください。

3.マンモグラフィ(乳房のレントゲン検査)で「間違いなくがんだ」と言われました。 本当でしょうか?

どんな専門医でもマンモグラフィだけで「間違いない」とは言えません。

  • 集団検診のマンモグラフィーでは約6%に異常が指摘されますが、それが乳がんである確立は6%以下であると報告されています。
  • 精密検査用マンモグラフィで乳がんと診断されたうち、本当に乳がんであるのはわずか15~30%です。
    乳がんの疑いがあるときは「細胞診」または「組織診」による直接診断が必要です。

マンモグラフィマンモトーム

4.乳がんの直接診断にはどのようなものがありますか?

①細胞診

外来で短時間のうちに行える検査で、手術ではありません。

穿刺吸引細胞診
注射器でしこりの中の液体や細胞を採取します。
分泌物の細胞診
乳汁中に乳がん細胞がないか調べます。
②組織診

以下の方法でしこりの一部またはすべてを切除します。

針生検
特別な針を用いてしこりから組織の一部を取ります。しこりを手で触れにくいときは超音波やレントゲン透視下で観察しながら行うこともあります。
外科生検
手術でしこりをくりぬいて取る「検査」です。取りきれていればこれが「治療」ともなるため、外科生検は取り残しなく取ってもらうことが必要です。

5.針生検の結果、乳がんと診断され、「早く手術しないと針を刺したところからがん細胞が身体中にばらまかれてしまうよ!」と言われましたが本当ですか?

乳がん国際ガイドラインもこう言っています。「細胞診や針生検をしたことによってがん細胞がばらまかれたという報告はありません」
「早くしないとがんが散らばる」と言って入院や手術を急がせる医師は、患者さんからセカンドオピニオン(他の医師の意見)を受ける機会を奪って、逃がさないためにこう言っているのです。 入院をせかされたら「その前にセカンドオピニオンを受けたいので協力していただけますか?」と言いましょう。

6.細胞診で「乳がんだ」と言われました。これは間違いないでしょうか?

細胞診は5段階に評価されます。クラス1、2は良性。クラス4、5は悪性。クラス3は灰色病変、つまり良・悪性の判断がつかないものです。あなたはクラスいくつと言われたのでしょうか。細胞診を行ったときは、必ずクラスいくつかを聞いて、結果のコピーをもらってください。

7.細胞診でクラス2と言われました。これは正常でしょうか?

細胞診のクラス1、2は良性ですが、良性すなわち正常ではありません。良性の腫瘍(しこり)もあるのです。またがんの部分が正確に採取されていない場合もあります。あわてて手術する必要はありませんが、定期的な検診が必要です。次のような場合は切除(手術で取り除くこと)が考慮されます。

  • たとえ良性でもどんどん大きくなってくるとき。
  • 臨床症状や間接診断から悪性が否定できないとき。
  • 定期検診をしたくないとき。

8.細胞診でクラス3と言われました。どうしたらよいでしょうか?

細胞を取ってみても良・悪性の判断がつかないときクラス3と判定します。通常は数ヵ月後に再検査が行われますが、次のような場合は針生検または外科生検が計画されます。

  • 何度細胞診を行ってもクラス3が出るとき。
  • 細胞診でこれ以上の情報が得られないと判断したとき。

9.細胞診でクラス4と言われました。これは乳がんですよね?

細胞診でクラス4、5は悪性です。しかし病理医がクラス5と付けずに4と付けたのには、次のような理由があるはずです。

  • いくつかの悪性の所見はあるがすべて揃っていないとき。
  • 乳がんの中でもおとなしい性格のとき。
  • 乳がんではない可能性があるとき。

実際に乳がんの細胞診でクラス4と言われて乳房を全部取ってみたところ、乳がんがなかったという話があります。つまり「きわめて乳がんが疑わしいががんでない場合もある」ととらえるべきです。クラス4のときは、あわてて全摘を受けずに針生検または外科生検をしましょう。

10.細胞診でクラス5が出ました。間違いなく乳がんでしょうか?

専門医の触診とレントゲン、超音波検査、細胞診のいずれもが乳がんと診断したときは乳がんである確立は99%以上です。
逆にいずれの検査も良性のとき乳がんである確立は0.5%以下です。

細胞診でクラス5が出た時は乳がんの治療計画を立てなければなりません。ただし、次のような場合は針生検または外科生検が必要です。

  • 浸潤がん非浸潤がんかを知りたいとき。
  • 術前補助療法(抗がん剤治療)を行うとき。ホルモン受容体やHER-2、組織学的悪性度(グレード)を調べることによって、抗がん剤の治療計画が立てられます。

11.生検で乳がんではないと言われました。本当に大丈夫でしょうか?

生検は組織診とも言われ確定診断です。生検で乳がんでないと言われれば乳がんではありません。ただし、乳がんの患者さんは以前に同じ部位の生検を受けていることが多いのです。「そのときは悪い物ではないと言われました」というのですが、「では何だと言われましたか?」と聞くとわからないと言うのです。これでは以前からあったものとの因果関係はわかりません。生検をしたら必ず結果のコピーをもらって、保存しておいてください。

12.生検で「乳がんだ」と言われました。間違いなく乳がんでしょうか?

生検は確定診断です。生検で乳がんだと言われたら間違いなく乳がんです。あわてずに次の作戦を立てなければなりません。

乳がんの診断法(図)

図1-1 乳がんの診断法

ワンポイントアドバイス

乳腺の代表的な良性腫瘤

①線維腺腫
触診上は丸く境界明瞭で、弾性があり、可動性に富んでいます。この腫瘤は10代以後、20~30歳代の女性に多く発症します。がんに変化することはありませんが、大きくなってから取ると傷も大きくなるので、急に大きくなってきたものや、すでに大きいものは切除が必要です。最近では乳房に傷を付けずに脇の下からとる方法も報告されています。
②乳腺症
多くは痛みを訴えます。疼痛は周期的で排卵時から増強し始め、月経開始とともに消退します。痛みの持続はほんの数日の場合もあれば、数週間の場合もあります。通常は左右対称性に生じ、乳房の外側上方に最も多く起きます。良性や悪性の腫瘤はいずれも、より境界が明瞭ですが、乳腺症ははっきりとした境界を持ちません。線維腺腫よりも少し年齢を増した、30、40歳代に発症します。
③嚢胞
乳腺症の一症状です。丸く、境界明瞭で可動性があるように触れます。疼痛や圧痛を有することがあり、本来は柔らかいのに液体が緊満すると固くなることがあります。
④葉状腫瘍
30代以降に発生する柔らかい腫瘍です。顕微鏡で観察すると“葉”のように見えることから葉状腫瘍と呼ばれます。昔は葉状肉腫と呼んでいましたが、今は良性、悪性の葉状腫瘍に分類されています。急激に大きくなり、ときには乳房の大きさが倍以上になってから病院を訪れる人もいます。診断は針生検が有用ですが、良性と悪性が入り交じっていることが多いので、その判断は全部切除してみないとわからないことがあります。治療は良性の場合はしこりのくりぬきも行われますが、局所再発をきたしやすく、再発するたびに悪性度が増すことから、乳房の単純全摘術が行われることもあります。悪性とわかっているときには乳房単純全摘術を勧められますがリンパ節を取る必要はありません。放射線療法や抗がん剤の効果はありません。

ワンポイントアドバイス

乳がんの遺伝子診断

乳がんの一部は家族発生し、その半数近くの人がBRCA1、BRCA2というがん遺伝子を持っていることが明らかになりました。がん遺伝子異常は採血や口の中の粘膜で診断できます。そこで血縁者に2名以上の乳がん体験者がいる場合や、乳がん遺伝子の見つかった方がいる場合は遺伝子診断を勧められることもあるでしょう。遺伝子診断によって次のことが可能です。

  • 家族の中から乳がん遺伝子を持つ人を発見する。
  • 乳がん遺伝子を持つ人には検診を勧めることにより早期発見、早期治療が可能となる。
  • さらに予防的にホルモン療法や両側乳房全摘術を行う。これらの治療により乳がんを予防することができます。その一方で次のような欠点もあります。
  • がん遺伝子を持っているからといって必ずしもがんになるとは限らない。
  • がん遺伝子を持っていないからといってがんにならないとは限らない。
  • がん遺伝子を持っていると言われた人は一生がんの恐怖におびえなければならない。
  • その情報が外部に漏れたとき、就職や結婚のうえで差別される恐れがある。

そのため、現時点での遺伝子検査は倫理上の問題があるといえます。医師は単なる学問的興味からがん患者さんおよびその家族に遺伝子検査を勧めるべきではありません。以上に述べたような利点と欠点を十分に説明したうえでの、本人の承諾とプライバシーの保護が前提となります。

乳がん・乳房再建コラム

集団検診と精密検査

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

「毎年検診を受けて異常がないといわれてきたのに、今年になって1cmの乳がんですといわれました。がんはそんなに急に大きくなるものでしょうか、または見落としでしょうか」というような質問をよく受けます。

細胞は倍々に増えていくとお話ししました。10回分裂するごとに数と体積と重さは10の3乗、すなわち1000倍になり、1辺の長さは10倍になります。
細胞1個の大きさは10ミクロン、つまり0.01mmですから、がん細胞が10回分裂し0.1mm。20回分裂して1mm。これでは見つかりません。30回分裂して1cmになったときに見つけるのです。40回分裂したら10cm。これでは助かりません。
つまり去年の時点では小さすぎて見つからなかった。でも今年検診を受けなければ。 10cmになっていたかもしれない、ということです。

もう1つ、集団検診の目的は容疑者を見つけることです。犯人を取り逃がさないために少しでも可能性のある人を何十人もピックアップします。乳がんの疑いといわれたからといってあわてる必要はありません。そのほとんどは無罪だからです。
これに対して精密検査の目的は真犯人を見つけることです。犯人を確定するためには、DNA鑑定のような手間のかかることをします。

あなたの受けていたのがもし集団検診だとしたら、見のがされたとしても文句はいえません。それに文句をいい出すと、検診でひっかける容疑者の数を十倍にも百倍にも増やさなくてはいけなくなり、無実の罪に問われる人が非常に多くなります。それを精密検査で白黒つけるためには、片っ端から針を刺して組織を調べなくてはいけません。

「それはわかる、しかし自分のことだけは見落とさないでほしい」と思うなら自己検診をすることです。お風呂に入ったときタオルやスポンジで洗わずに、手のひらで全身をなで洗いするのです。毎日、自分の乳房をよくさわっていれば、変化があれば気づくはずです。
しこりがあったときは乳腺専門医のところに行って精密検査を受けてください。

間接診断と直接診断

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

犯人と断定する方法には「状況証拠」と「物的証拠」の2つがあります。 防犯カメラに写っていた画像や目撃者の証言、勤機の有無から間接的に推定するのが 状祝証拠。 指紋や血液型、最近ではDNAを鑑定して個人を特定するのが物的証拠です。 名刑事になると証拠が見つかる前から犯人の察しがつきます。しかしそれだけでは逮捕することはできません。証拠集めが必要なのです。

同じように名医になれば手でしこりにふれるだけでがんかどうか察しがつくのですが、 それだけでは確定診断になりません。X線や超音波で写った影を見て状況証拠を集めないといけません。これを間接診断といいます。 しかし影絵を見てキツネだと思っていたら人の手だったということもあります。これだけでは真犯人とは断定できません。物的証拠が必要です。

昔はしこりの部分を手術で切り取って、病理医が鑑定して乳がんかどうか診断していました。これを外科生検といいます。もしそれががんで取り切れていれば、乳房温存術にもなります。しかし取ってみたら単なる脂肪のかたまりということもあります。 このときは痛い思いをして大切な乳房に傷をつけてしまったことになります。

今では身体にメスを入れなくても、注射針で細胞を取る細胞診、局所麻酔してもっと太い針で組織を取る針生検、レントゲンや超音波で見ながらさらに太い針で組織を吸い取るマンモトームなどの方法があります。これを直接診断といいます。 DNA鑑定で犯人といわれたら言い訳ができないように、直接診断である病理診断で乳がんといわれたら、間違いなく乳がんです。

裁判で真犯人と判決を受けても、不服があれば「控訴」しますよね。病理診断で乳がんと診断されても信用できないときは、病理の標本を借りてほかの病理医に再鑑定してもらうしかないでしょう。

細胞診と組織診

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

自動車はエンジンやバッテリーやボディなどからできています。エンジンはさまざまな部品から、部品はさまざまな材質からできています。
私たちの身体もさまざまな臓器でできています。乳房も臓器のひとつです。
臓器は組織によってできています。乳房は皮膚・皮下脂肪・乳腺などの組織によってできていて、乳腺は母乳をつくる小葉と、それを乳首まで運ぶ乳管という組織に分かれます。

それぞれの組織はそれぞれの細胞によってできています。
細胞を取って調べるのが細胞診です。細胞の顔つきを見れば、その細胞が悪性か良性かがわかります。顔つきを5段階に分類して、ⅠとⅡは良性、ⅣとⅤは悪性、Ⅲはどちらともいえない灰色。さらにⅢaは良性寄り、Ⅲbは悪性寄りということになります。
しかし細胞診だけでは胃がんなのか乳がんなのかわかりません。どこからか転移してきたがんなのかもしれません。

そこでがんの疑いがあるときは、針生検やマンモトームといった組織診を行います。
組織診はがんの確定診断のほかに、がんが小葉からできた小葉がんか、乳管から生まれた乳管がんかがわかります(ほとんどは乳管がんです)。
また乳管や小葉の壁の中にとどまっている非浸潤がんか、壁を突き破って周囲に浸潤した(しみ込んだ)浸潤がんかがわかります。

非浸潤がんならばリンパ節転移や遠隔転移(肺や肝臓や骨への転移)を起こさないかわりに、乳管の中に広がっていることが多いので、全摘が必要になることがあります。
浸潤がんならば、グレードといってがん組織の顔つきもわかりますし、リンパ管侵襲・ 脈管侵襲といって、がん組織のリンパ管や血管の中にがん細胞があるかどうかもわかります。ホルモン療法が効くか、ハーセプチンという分子標的薬が効くかも判明します。

こうした情報は、薬物治療を術前・術後のいずれにするか、するなら抗がん剤かホルモン療法か分子標的薬かを決めるうえでなくてはならない情報です。
たくさんの情報を集めて最も効果的な治療法を決定する。そのうえでも、組織診は不可欠なのです。組織診の結果が出たら必ずコピーをもらいましょう。

線維腺腫

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

お相撲さんが横網に昇進したとき「謹んでお受けいたします、〇〇〇〇の決意で精進します」と言って四字熟語を使って挨拶をしますね。私も四字熟語が大好きです。
四字熟語の中でも、見てもほれぼれ、書いてもうっとりするのが、「線維腺腫」という病名です。へんもつくりも似通っていて規則的で、書道の心得があれば額にかけて飾っておきたい気持ちです(わっかるかなー、わっからないだろうなー)。

さて、この腫瘤は若い女性に多く、丸く弾力があって、くりくりとよく動きます。 がんになることはないので、小さければ取る必要はありません。しかし、女性ホルモンを栄養にしてだんだん大きくなります。大きくなってから取ると傷も大きくなるので、急に大きくなってきたものや、すでに大きいものは早めの切除をお勧めします。
小さいものは乳輪のへリから取れば傷が目立ちません。さらに最近では乳房に傷をつけずに脇の下から取ることもあります。いろいろ工夫してますねえ。

さて線維腺腫の兄弟分に葉状腫瘍があります。形が葉っぱ型なのではなく、顕微鏡で見たとき葉っぱのような模様に見えるのでこう呼ばれています。
昔は「葉状肉腫」と呼んでいました。肉腫は粘膜以外にできた悪性腫瘍のことです。
脂肪肉腫、骨肉腫、筋肉肉腫などがあります。しかし葉状腫瘍はほとんどが良性なので肉腫という呼び方は正しくないですね。そこで、良性のときは葉状腫瘍、悪性のときは悪性葉状腫瘍と呼んでいます。

しかし良性でもその成長は驚くほど早く、数カ月様子を見ているうちに何倍にも大きくなります。あるときクリニックを訪れた患者さんが何かを抱いているので、子どもかと思ったら、なんと巨大化した葉状腫瘍だったことがあります。
また、しこりのくりぬきだけでは非常に再発しやすく、取っても取っても再発して、手に負えなくなって当院に紹介された方もいます。
このように良性の割にやっかいなのが葉状腫瘍です。大きいものは皮下乳腺全摘・同時再建をお勧めします。

乳腺症とは

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

葉状肉腫の名前が適切でないという話をしましたが、ほかにも困った名前があります。

乳房の手術をしたあと、アンダーや二の腕の内側に引きつれができることがあります。
特に手を上げたときに1本の筋のように突っ張って、押すと鈍い痛みがあります。発見者の名を取ってモンドール病と呼ばれていますが、一時的なリンパ管の炎症で、何もしないで様子を見ているうちに自然に治ってしまいます。
しかし、名前に「病」という字がついているので、診断された患者さんはびっくりして、何か治療が必要なのではないかと大騒ぎします。私なら「モンドール徴候」と呼びますがね。

そこへいくと乳腺症はいいですね。乳腺症とは野菜でいうと鬆が入った状態、キュウリや大根が筋張って中に空洞ができることがあるでしょ。乳腺も女性ホルモンの影響を受けていますので、ホルモンがアンバランスになると筋張ったり空洞ができたりします。
筋張った状態を「線維化」といい、空洞ができた状態を「嚢胞」といいます。そのため別名「線維囊胞症」といいます。

乳腺症も昔は前がん状態だと思われていて、よく切除したものです。確かに乳腺症のある人は普通の人より3倍乳がんになりやすいといわれています。しかしその原因はホルモンですから、あっちこっちがしこります。両方に出ることもありますし、いつの間にか消えることもあります。
ですから切って治るものではありませんし、切ったところとは違うところががんになることもあるでしょう。そこで今は切らずに検診で様子を見ます。

「名は体をあらわす」というのですから、病気で治療が必要なのか、そのまま経過を観察していればいいのかがわかるように、もっと適切な名前にしてもらいたいものです。



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