著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則
私たちの身体には細菌感染を防ぐための「リンパ液」と呼ばれるタンパク質に富んだ液体が流れています。腕や乳房からのリンパ液は脇の下にある「腋窩リンパ節」にいったん集められ、細菌やがん細胞を濾過したのち、心臓近くの静脈に注ぎます。このリンパ液の流れがなんらかの原因でさえぎられると、リンパ液がたまってむくみを生じます。これがリンパ浮腫です。リンパ浮腫の原因には次のようなものがあります。
- リンパ節郭清
- リンパ節は脇の下から鎖骨の下にかけて連なっており、外側からレベル1,2,3と呼ばれています。すべてのリンパ節を取ってしまうと浮腫をきたしやすくなりますので、通常はレベル1と2を郭清します。リンパ浮腫になる確率は6%です。
- 放射線照射
- 乳房に対する放射線が脇の下にかかるとリンパ液の流れが悪くなり、4%の確率でリンパ浮腫になります。
- リンパ節郭清と放射線
- 完全郭清してあるところに放射線がかかれば36%の確率でリンパ浮腫になります。
- リンパ節転移
- 残ったリンパ節にがんの再発が起きたときもリンパ液の流れが妨げられます。
- 感染症
- リンパ液の流れが悪いと細菌感染しやすくなりますが、感染症によって浮腫はますます悪化します。
手術のあとは皮膚の感覚がしびれているので、腫れているような感覚があります。本当に腫れているかを調べるためには、巻き尺で両手の太さを測ります。測る場所は、中指の関節、手首、ひじから10cm手首寄りと15cm肩寄りの4点です。いずれかの点でも2cm以上の差がある場合、医師に相談してください。リンパ浮腫の治療が必要です。
リンパ浮腫診療ガイドラインでは次の4段階に分類されています。
- 0期
- 浮腫が明らかでないときです。
- I期
- 指で押すとへこみが残りますが、初期で手足を上げることによって治まります。
- II期
- 手足を上げても改善しなくなり、指で押すとへこみがはっきりします。
- II期後期
- 指で押してもへこまなくなります。
- III期
- リンパ浮腫に加えてイボや角質化などの皮膚の変化が見られます。