■乳がん・乳房再建コラム

乳がん・乳房再建コラム(転移性乳がんの治療)

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

遠隔転移したときの補助療法

春になると畑には野菜の芽だけでなく、雑草もたくさん生えます。そこで種まきの前に除草剤をまきます。といってもどんな雑草が生えてくるかわからないですよね。いろいろな雑草に効くように、何種類かの除草剤をまとめてまきます。ただし長期間まいていると野菜自体が弱ってしまうので、短期集中で、そのかわり量を多くまきます。

乳がんの術後、予防のために抗がん剤を使うときも、どの抗がん剤が効くのかわかりませんから、「多剤併用(いくつかの薬を併用する)、短期集中、大量投与」します。髪の毛はばっさり抜けますが治療は半年で終了します。

しかし今回は遠隔転移です。遠隔転移というのはがんが血液やリンパを通って全身に広がったことをいいます。がんは血液中に存在しますので、X線に写った部分だけを取ってもなくなりません。いったんがんがなくなったように見えても、それは根治とは呼ばず、「寬解」といいます。必ず身体のどこかにひそんでいるからです。つまり「遺隔転移は根治できない」ので、おとなしくさせて共生することがコツなのです。

今まで主治医に励まされて根治をめざしてきたのに、今度は根治はできないといわれても受け入れがたい話かもしれません。しかし考えてみてください。糖尿病や高血圧、腎不全、リウマチなど根治できず、一生つき合っていかなければならない病気はたくさんあります。遠隔転移もそうした慢性病のひとつなのです。

治療の目的は根治ではなくなり、緩和、つまり症状を和らげ、がんをおとなしくさせることですので、今回の原則は「単剤使用、長期(生涯)、少量投与」です。

単剤
一度にいくつもの薬を使ってがんが小さくなったとすると、どれが効いたのかわからず、どれもやめることができなくなってしまいます。そこで効きそうなものから使って効かなければ次の薬に変えます。
生涯使う
遠隔転移は根治できないのですから生涯のつきあいです。
少量
一生使う薬で身体を壊しては意味がありません。副作用が少ないものを副作用が出ないくらいの量で使います。

具体的にはホルモン受容体陽性ならホルモン療法、HER2陽性ならハーセプチンだけの点滴を3週に1回です。

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

乳がんにならない食事と生活

このわずか30年の間に、日本のがん死亡率は倍増しました。戦前に猛威を振るった「結核」の死亡率を軽々と超えたのです。
驚くべきことに私が生まれた60年前には、胃がんと子宮頸がん以外のがんはほとんど存在しませんでした。生活環境の変化によってさまざまながんが急増したのです。

そこで、増えているがんや減っているがんを原因別に分類してみました。

感染症
胃がんは「ピロリ菌」、子宮頸がんは「ヒトパピローマウイルス」、肝臓がんは「肝炎ウイルス」が原因で、衛生環境の改善に伴って減ってきています。
タバコ
舌がん、咽頭喉頭がん(のどのがん)、肺がん、食道がん、一部の胃がんはタバコが原因です。
喫煙率が下がったことによって今後滅ってくるでしょう。
食生活
乳がん、前立腺がん、子宮体がん、卵巣がんは性ホルモンによって成長します。性ホルモンはコレステロールによってつくられています。コレステロール増加の原因は食生活ですね。狂った食事がこうしたがんを急増させています。

これまでは「早期発見・早期治療」ががん死亡率を減らす、と信じられてきました。

しかし肺がんを例に取ってみれば、どんなに肺がん検診率を上げても、どんなに新しい抗がん剤を開発しても、禁煙をしないかぎり肺がん死亡率は下がらなかったのです。

同じように、どんなに乳がん検診率を上げても、どんなに新しい抗がん剤を開発しても、食生活の改善をしないかぎり乳がん死亡率は下がらないのです。

私はけっしてがん治療を否定したり代替療法を推奨したりしているのではありません。いかなるすぐれた乳がん治療であろうと、食生活の改善なしに死亡率を減少させることはできないことを訴えているのです。

欧米の乳がん死亡率は日本の5倍、そして日本人も欧米に住むと死亡率が5倍になります。ということは食生活の改善で死亡率を減らせるということです。

ではどのように食生活を見直せばいいのでしょうか。それはこの世からメタボをなくせばいいのです。

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

メタボリックシンドロームの教え

「メタボの三高」はご存じですよね、高収入、高学歴、高身長⋯⋯ではないですよ。高血圧、高血糖、高脂血症(脂質異常症)、それと同時にウエストが太ければメタボリックシンドロームと診断されます。しかし、あわてて病院に行く必要はありません。
高血圧と診断されると病院で降圧剤を処方されます。しかし高血圧は動脈硬化によって流れが悪くなった血液を、血圧を上げることによって流してくれているのです。動脈硬化の原因を改善せずに降圧剤で血圧を下げたら、脳や腎臓に血液が送られなくなります。

高血糖といわれると糖尿病の教育入院を勧められます。インスリン注射によって低血糖をきたさないために、摂取カロリーの6割を糖質で摂るように指導されます。しかしそもそも糖質を摂らなければインスリンを打つ必要もないのです。

血中のコレステロール値が高いと高脂血症と診断されます。しかしコレステロールは細胞表面の細胞膜をつくっている大切な栄養素。生活習慣で傷ついた細胞を修復するために肝臓から送られてくるのです。生活習慣を改めずにコレステロール降下剤を用いたら、細胞が修復されなくなります。

大切なのは薬で検査数値を正常化することではなく、その原因となる生活習慣を改めることなのです。そこで、メタボリックシンドロームという言葉の裏にひそむ「メッセージ性」を読み取ってみましょう。

  1. ウエストが太いのは太りすぎ
  2. 高血糖は砂糖の摂りすぎ
  3. 高脂血症は脂の摂りすぎ
  4. 高血圧は塩の摂りすぎ

こう考えてみると、解決方法が見えてきます。

まず人はなぜ太るのでしょう。

人類30万年の歴史は飢餓との闘いでした。いつ食い物にありつけるかわからないので、食べたものを脂肪として蓄える能力をもつ者だけが、今日まで生き延びることができたのです。これを「飢餓遺伝子」または「倹約遺伝子」といいます。

そんな太りやすい体質に対するこれまでのダイエット法が間違っていたのです。

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

カロリー計算の誤り

摂取カロリーが多いと太るのか?

糖質とタンパク質は1グラムでたったの4キロカロリーなのに対して、脂肪は倍以上の9キロカロリーといいますので、油ものを避けている人が多いでしょう。しかし最新の栄養学は次のように改められました。

  1. タンパク質は太らない…体内で筋肉や肝臓のアミノ酸になるが、脂肪には変換されないので太りません。
  2. 糖質は太る…血糖値を下げるためのインスリンホルモンによって、脂肪細胞の表面の糖質輸送体(GLUT)が糖質を取り込んで脂肪に変えるので太ります。
  3. 脂肪とタンパク質を摂るとやせる…血糖値を上げるため膵臓から分泌されるグルカゴンホルモンに、脂肪細胞中のホルモン感受性脂肪分解酵素(HSL)が反応して脂肪を分解して血中に放出するのでやせます。
  4. 脂肪と糖質を摂ると太る…末梢血管の内皮細胞(内側の細胞)に存在するリポタンパク質脂肪分解酵素(LPL)が血中の脂肪を分解して脂肪細胞に取り込むので太ります。

つまり、摂取カロリーが多くても糖質を摂らなければ太らないのです。

消費カロリーが多いとやせるのか?

激しい筋トレをすると短時間に大量のカロリーを消費します。しかし無酸素運動で消費されるのは筋肉中のグリコーゲンという糖質で、脂肪は燃焼しません。それに対して散歩の消費カロリーは少ないのですが有酸素運動で脂肪を燃焼するのでやせるのです。

炭水化物やアルコールは太るのか?

レタスには脂肪やタンパク質はほとんど含まれず、炭水化物が主体です。しかしレタスをいくら食べても太りません。炭水化物には「糖」と「食物繊維」があり、糖は消化吸収されて太りますが、レタスの主成分の食物繊維は消化吸収されないので太りません。

アルコールは1gが7kcal、ガソリンは10kcalですが、どちらもエネルギーとして利用できません。アルコールはカロリーがいくら高くても太りません。

カロリー計算は食物を断熱材の箱の中で燃やして生じた熱量を計算するのですが、体内で同じ熱量が発生するわけではないので、根本的に間違っています。

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

糖質はなぜいけないのか?

これまでさまざまなダイエット法が提唱されてきました。

低脂肪食
脂肪は糖質と一緒に摂らなければ太らないのですから間違いです。
ベジタリアン
穀物や果物を摂りすぎる傾向にありますが、これらは糖質ですので間違いです。
低GIダイエット
血糖値や血中インスリン値が上がらない食べ物を摂る方法です。果物に含まれる果糖は低GIですが、中性脂肪を増やしますので間違っています。
ローカーボ
炭水化物を避ける方法ですが、炭水化物は糖と食物繊維からできています。食物繊維は消化吸収されずに善玉菌の棲み家と餌になりますので、これを避けることは間違っています。
地中海食
今から60年前にアンセル・キーズという科学者が地中海地方には心筋梗塞が少ない、として肉や卵を避けて、オリーブオイルや穀物を摂るように勧めたのです。
しかしオリーブオイルをまったく摂っていないにもかかわらず心筋梗塞の少なかった日本や中国のデータを意図的に削除していたので、この考えは間違っています。

糖質は肥満と糖尿病の原因となりますが、問題はそれだけではありません。

鍋で肉を焦がしても、キッチンペーパーで拭けばコゲは落ちます。しかし、ごはんやジャガイモを焦がすと、いくら洗ってもコゲはとれません。同じように精製した糖質を摂ると血管の内側のタンパク質と結びついて、終末糖化産物(AGE)という頑固なコゲを作ってしまいます。つまり糖は「動脈硬化」を起こし、心臓病や脳卒中の原因になるのです。これを糖毒性といいます。

またがんドックではPET検査が行われます。糖を点滴してからレントゲンを撮ると、がんの部分だけが真っ赤に染まるのです。正常な細胞は脂肪やタンパク質もエネルギー源にしていますが、がん細胞が糖質だけを使う性質(ワールブルグ効果)を利用したものです。つまりがんは精製した糖質を摂ると成長しますし、低糖質の食事をすると成長できなくなります。

私は精製した糖質を「白物5品目」と呼んでいます。白米、パン、麺、小麦粉と砂糖で作った菓子、ジャガイモ。がん患者の方はこれらを摂らないでください。

著者:ナグモクリニック東京 総院長・理事長 南雲 吉則

野菜や果物は皮ごと

そういうことを申し上げると、お米や果物を摂ってはいけないのか、という人がいますが、そんなことはいっていません。食べ方があるというのです。

穀物や、野菜・果物の皮は外界とのバリアですので、次の3つの作用があります。

  1. 抗酸化作用…リンゴの皮をむいたら茶色く酸化しますが、皮があれば酸化しません。
  2. 創傷治癒作用…木になっているリンゴは皮が傷ついても、また皮が張ります。
  3. 抗菌作用…皮があるのでカビや菌が侵入してきません。

こうした作用をつかさどっているのがポリフェノールです。

つまり穀物なら全粒で、野菜や果物は皮ごと摂れば、抗酸化作用によって若返り効果や抗がん作用が生まれます。また創傷治癒作用によって、傷ついた肌や消化管が若々しくよみがえり、がんを防いでくれます。さらに抗菌作用は感染症が原因のがんを予防してくれます。

昔から「1個のリンゴは医者いらず」というのは、皮ごと食べた場合のことで、皮をむいたリンゴは果糖という糖のかたまりですから、肥満と糖尿病と動脈硬化による脳梗塞・心筋梗塞、さらにがんのもとなのです。

リンゴが皮ごとなら、ナシもカキも皮ごと。

スモモが皮ごとなら、モモもキウイも皮ごと。

キンカンが皮ごとなら、ミカンも皮ごと食べてください。ミカンの皮は「陳皮」といって、漢方薬の6~7割に含まれていますし、七味唐辛子にも入っています。

バナナやパイナップルやメロンのように皮が食べられない果物は食べないでください。

「皮ごと食べても農薬は大丈夫なのか」と心配する人もいますが、あなたはイチゴやサクランボを食べるときは、ごしごし洗わないでしょう。流水で洗う程度で十分なのです。

穀物は色の濃い雑穀米を摂るようにしましょう。

ただし担がん患者、つまりがんの術前の方、がんの薬を処方されている方、がんが再発している方は穀物や果物は控えてください。

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